大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅡBC 第4問 解説
(1)
まず、漸化式の基本の形の復習をしておこう。
復習
漸化式の基本の形は4つあって、
$p_{n+1}=p_{n}+d$
公差が $d$ の等差数列
$p_{n+1}=rp_{n}$
公比が $r$ の等比数列
$p_{n+1}=p_{n}+f(n)$
階差数列の一般項が $f(n)$
$ p_{n+1}=\alpha p_{n}+\beta$
$p_{n+1}-\gamma=\alpha(p_{n}-\gamma)$ の形にして解く
だった。
$\{a_{n}\}$ の漸化式は、復習の2番目の形だ。
なので、$\{a_{n}\}$ は
初項が $-3$
公比が $-\dfrac{1}{2}$
の等比数列である。
よって、$\{a_{n}\}$ の一般項 $a_{n}$ は
$a_{n}=-3\cdot\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
とかける。
解答ア:-, イ:3, ウ:-, エ:1, オ:2
この式の右辺は
$-3$ を $1$ 回
$-\dfrac{1}{2}$ を $n-1$ 回
かけたものだから、$a_{n}$ は負の数を $n$ 回かけたものだ。
したがって、
$n$ が奇数のとき、
$($負の数$)^{n} \lt 0$
なので
$a_{n} \lt 0$
解答カ:0
$n$ が偶数のとき、
$($負の数$)^{n} \gt 0$
なので
$a_{n} \gt 0$
解答キ:2
が成り立つ。
(2)
今度は $\{b_{n}\}$ だ。
$\{b_{n}\}$ の漸化式は、復習の4番目の形だ。
なので、お約束の方法で解こう。
$b_{n+1}=-\dfrac{1}{2}b_{n}-9$式A
の小さい文字を消して
$b=-\dfrac{1}{2}b-9$
として$b$を求めると、
$b=-6$
だ。
この $-6$ を式Aの両辺から引いて変形すると、
$$
\begin{align}
b_{n+1}+6&=-\dfrac{1}{2}b_{n}-9+6\\
&=-\dfrac{1}{2}b_{n}-3\\
&=-\dfrac{1}{2}(b_{n}+6)\class{tex_formula}{式A'}
\end{align}
$$
となる。
解答ク:6
ここで
$b_{n}+6=B_{n}$式B
とおくと、式A'は
$B_{n+1}=-\dfrac{1}{2}B_{n}$式A''
と表せる。
これは復習の2番目の形だ。
なので、$\{B_{n}\}$ は
式Bより、初項 $B_{1}$ は
$$
\begin{align}
\qquad B_{1}&=b_{1}+6\\
&=-3+6\\
&=3
\end{align}
$$
式A''より、公比が $-\dfrac{1}{2}$
の等比数列である。
よって、一般項 $B_{n}$ は
$B_{n}=3\cdot\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
とかける。
これを式Bに代入すると、求める $\{b_{n}\}$ の一般項 $b_{n}$ は
$b_{n}+6=3\cdot\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
より
$ b_{n}=3\cdot \textcolor{red}{\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}}-6$
であることが分かる。
解答ケ:3, コ:-, サ:1, シ:2, ス:6
この式の赤い部分を
$\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$式C
とする。
次に問われているのは、
すべての自然数 $n$ について、
式C$\leqq A$
が成り立つ最小の実数 $A$
だ。
ややこしい書き方をしているけれど、要するに
式Cの最大値 $A$ を求めよ
ということになる。
カキと同様に考えると、式Cは
$-\dfrac{1}{2}$ を $n-1$ 回
かけたものだから、負の数を $n-1$ 回かけたものだ。
なので、
$n$ が奇数のとき、
$($負の数$)^{n-1} \gt 0$
より
式C $ \gt 0$
$n$ が偶数のとき、
$($負の数$)^{n-1} \lt 0$
より
式C $ \lt 0$
である。
よって、式Cが最大になるのは $n$ が奇数のときだ。
$n$が奇数のとき、
$n=1$ のとき $\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{1-1}=1$
$n=3$ のとき $\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{3-1}=\dfrac{1}{4}$
$n=5$ のとき $\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{5-1}=\left(\dfrac{1}{4}\right)^{2}$
$\hspace{100px} \vdots$
となるから、$n$ が大きくなるにつれて式Cの値は小さくなってゆく。
以上より、式Cの最大値は
$n=1$ のとき $1$
であることが分かる。
したがって、
式C $\leqq 1$
つまり
$\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\leqq 1$
が成り立つ。
解答セ:1
この式の両辺に $3$ をかけて $6$ を引くと
$3\cdot\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}-6\leqq-3$
となるけど、この式の左辺は $b_{n}$ だ。
よって、すべての自然数 $n$ で
$b_{n}\leqq-3$
なので、ソの解答群のうち正しいものは
⓪
である。
解答ソ:0
(3)
(i)
$c_{k+1}\leqq 4$
に①式を代入すると、
$-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2}+4\leqq 4$
となる。
これはさらに
$-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2}\leqq 0$
${c_{k}}^{2}\geqq 0$
と変形できるけど、この式は $c_{k}$ の値によらず成り立つ。
よって、$c_{k+1}\leqq 4$ は $c_{k}$ の値によらず成り立つ。
解答タ:0
$-4\leqq c_{k+1}$
に①式を代入すると、
$-4\leqq-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2}+4$
となる。
これはさらに
$-8\leqq-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2}$
$16\geqq{c_{k}}^{2}$
より
$-4\leqq c_{k}\leqq 4$
と変形できる。
よって、$-4\leqq c_{k+1}$ が成り立つのは $-4\leqq c_{k}\leqq 4$ のときに限る。
解答チ:4
したがって、命題1の
$-4\leqq c_{k}\leqq 4\ \Rightarrow\ -4\leqq c_{k+1}\leqq 4$
は真である。
このことから、
$-4\leqq\alpha\leqq 4$
のとき、
$-4\leqq c_{1}\leqq 4\ \Rightarrow\ -4\leqq c_{2}\leqq 4$
$-4\leqq c_{2}\leqq 4\ \Rightarrow\ -4\leqq c_{3}\leqq 4$
$-4\leqq c_{3}\leqq 4\ \Rightarrow\ -4\leqq c_{4}\leqq 4$
$\hspace{100px} \vdots$
が成り立つので、命題2の
$-4\leqq\alpha\leqq 4\ \Rightarrow \left[ \begin{gathered} \text{すべての自然数 }n\text{ について、}\\ -4\leqq c_{n}\leqq 4\end{gathered}\right]$
も成り立つ。
(ii)
命題(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)について、ひとつずつ考えてみよう。
命題Ⅰ
問題文中の表1を見ると、$\alpha=5$ のとき、$c_{2}$,$c_{3}$,$c_{4}$ とも負になっている。
これを反例として、命題Ⅰは偽である。
命題Ⅱ
タで考えたように、$c_{k+1}\leqq 4$ はつねに成り立つ。
なので、$\alpha\leqq 4$ のとき、
$c_{1}\leqq 4$
$c_{2}\leqq 4$
$c_{3}\leqq 4$
$c_{4}\leqq 4$
$\quad \vdots$
が成り立つので、命題Ⅱは真である。
命題Ⅲ
$\alpha=-1$ のとき、①式より
$c_{2}=-\dfrac{1}{2}(-1)^{2}+4 \gt 0$
だ。
これを反例として、命題Ⅲは偽である。
っていうのが早いんだけど、反例が思いつかなければしかたがない。
そのときは、次のような考え方になる。
タチと同じように、$c_{n+1}$で考える。
$c_{n+1} \lt 0$
に①式を代入すると、
$-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2}+4 \lt 0$
となる。
これはさらに
$-\dfrac{1}{2}{c_{k}}^{2} \lt -4$
${c_{k}}^{2} \gt 8$
より
$c_{k} \lt -\sqrt{8}$,$\sqrt{8} \lt c_{k}$
と変形できる。
よって、$c_{k+1} \lt 0$ が成り立つのは、
$c_{k} \lt -2\sqrt{2}$,$2\sqrt{2} \lt c_{k}$
のときだ。
$\alpha$ がこれ以外の負の数のとき、$c_{2} \lt 0$ は成り立たない。
したがって、命題Ⅲは偽である。
以上より、ツの解答群のうち、正しいものは
⑤
であることが分かる。
解答ツ:5