大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅠA 第4問 解説

はじめに

「二人が取り出す共通の自然数」は長いので、この解説では単に「共通の数字」と書く。
同様に、「カードに書かれた自然数」は「数字」とする。

また、花子さんと太郎さんのどちらが先に試行を行っても 結果に影響はない。
ここでは花子さんが先ということにして解説する。

図A
大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅠA 第4問 解説図A

図Aのような試行Aと試行Bを考える。

(1)

(i)

試行Aを1回行った場合、6個の異なる数字から2個取り出すので、取り出し方は

$$ \begin{align} {}_{6}\mathrm{C}_{2}&=\dfrac{\textcolor{dodgerblue }{\cancelto{3}{\textcolor{black}{6}}}\cdot 5}{\textcolor{dodgerblue }{\cancel{\textcolor{black}{2}}}\cdot 1}\\ &=15\class{tex_formula}{式A} \end{align} $$ 通りある。

解答ア:1, イ:5

(ii)

$P(A_{2})$

事象$A_{2}$が起こるのは、二人が同じ数字のペアを取り出す場合。

数字のペアの取り出し方は、式Aの
$15$通り
だったけど、この$15$通りは同じ確率で起こる。

なので、花子さんがどんな数字のペアを取り出しても、太郎さんが同じペアを取り出す確率はつねに
$\dfrac{1}{15}$
だ。

したがって、
$P(A_{2})=\dfrac{1}{15}$式B
である。

解答ウ:1, エ:1, オ:5

別解

事象$A_{2}$の例として、共通の数字が1と2である場合を考える。

花子さんが1と2を取り出す確率は
$\dfrac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{6}\mathrm{C}_{2}}=\dfrac{1}{15}$
太郎さんが1と2を取り出す確率も、同様に
$\dfrac{1}{15}$
なので、共通の数字が1と2で事象$A_{2}$が起こる確率は
$\dfrac{1}{15}\times\dfrac{1}{15}$式C
となる。

けれど、事象$A_{2}$は1と2以外でも起こる。
事象$A_{2}$が起こる数字のペアは、式Aの$15$通りある。
さらに、この$15$通りは同じ確率で起こるから、どの数字のペアで事象$A_{2}$が起こる確率も、式Cと同じ
$\dfrac{1}{15}\times\dfrac{1}{15}$
だ。

したがって、事象$A_{2}$が起こる確率$P(A_{2})$は、
$$ \begin{align} P(A_{2})&=\dfrac{1}{15}\times\dfrac{1}{\textcolor{dodgerblue }{\cancel{\textcolor{black}{15}}}}\times \textcolor{dodgerblue }{\cancel{\textcolor{black}{15}}}\\ &=\dfrac{1}{15}\class{tex_formula}{式B} \end{align} $$ である。

解答ウ:1, エ:1, オ:5

$P(A_{0})$

事象$A_{0}$は、共通の数字がない場合だ。
そのためには、太郎さんは花子さんが取り出さなかった数字から2個取り出せばよい。

数字は全部で$6$個あり、そのうちの$2$個は花子さんが取り出した数字だ。
よって、太郎さんは残りの$4$個から$2$個取り出せばよい。

したがって、その確率$P(A_{0})$は

$$ \begin{align} P(A_{0})&=\dfrac{{}_{4}\mathrm{C}_{2}}{{}_{6}\mathrm{C}_{2}}\\ &=\dfrac{\textcolor{royalblue}{\cancelto{2}{\textcolor{black}{6}}}}{\textcolor{royalblue}{\cancelto{5}{\textcolor{black}{15}}}}\class{tex_formula}{式D}\\ &=\dfrac{2}{5} \end{align} $$ となる。

解答カ:2, キ:5

(2)

(i)

(1)(ii)の別解と同様に解こう。

事象$B_{2}$の例として、共通の数字が1と2である場合を考える。

試行Bを2回行う場合、 すべての数字の取り出し方は
$6^{2}$通り
取り出した数字が1と2である場合の数は
${}_{2}\mathrm{P}_{2}$通り

なので、1と2を取り出す確率は、花子さんも太郎さんも
$\dfrac{{}_{2}\mathrm{P}_{2}}{6^{2}}=\dfrac{2}{6^{2}}$
だ。

よって、、共通の数字が1と2で事象$B_{2}$が起こる確率は
$\dfrac{2}{6^{2}}\times\dfrac{2}{6^{2}}$式E
である。

けれど、事象$B_{2}$は1と2以外でも起こる。
事象$B_{2}$が起こる数字のペアは、式Aの$15$通りある。
さらに、この$15$通りは同じ確率で起こるから、どの数字のペアで事象$B_{2}$が起こる確率も、式Eと同じ
$\dfrac{2}{6^{2}}\times\dfrac{2}{6^{2}}$
だ。

したがって、事象$B_{2}$が起こる確率$P(B_{2})$は、
$$ \begin{align} P(B_{2})&=\dfrac{2}{6^{2}}\times\dfrac{2}{6^{2}}\times 15\\ &=\dfrac{\textcolor{dodgerblue}{\cancel{\textcolor{black}{2}}}\times \textcolor{lime }{\cancel{\textcolor{black}{2}}}\times \textcolor{chocolate}{\cancelto{5}{\textcolor{black}{15}}}}{\textcolor{dodgerblue}{\cancelto{\textcolor{chocolate}{\cancel{\textcolor{dodgerblue}{3}}}}{\textcolor{black}{6}}}\times \textcolor{lime}{\cancelto{3}{\textcolor{black}{6}}}\times 6^{2}}\\ &=\dfrac{5}{3\times 6^{2}}\class{tex_formula}{式F}\\ &=\dfrac{5}{108} \end{align} $$ となる。

解答ク:5, ケ:1, コ:0, サ:8

(ii)

次は、事象$B_{0}$が起こる確率$P(B_{0})$だ。
花子さんの発言のように、場合分けして求めよう。

花子さんが2回とも同じ数字を取り出す場合

花子さんが同じ数字を2回取り出す確率は
$\dfrac{1}{6}$式G
事象$B_{0}$が起こるのは、花子さんが取り出さなかった5個の数字から太郎さんが取り出したとき。
太郎さんのすべての取り出し方は
$6^{2}$通り
花子さんが取り出さなかった5個の数字から取り出す場合の数は
$5^{2}$通り
なので、その確率は
$\dfrac{5^{2}}{6^{2}}$式H
となる。

よって、このとき、事象$B_{0}$が起こる確率は、式G$\times$式Hの
$\dfrac{1}{6}\times\dfrac{5^{2}}{6^{2}}$式I
$\quad=\dfrac{25}{216}$
である。

解答シ:2, ス:5, セ:2, ソ:1, タ:6

花子さんが異なる数字を取り出す場合

花子さんが異なる数字を取り出す確率は
$\dfrac{5}{6}$
事象$B_{0}$が起こるのは、花子さんが取り出さなかった$4$個の数字から太郎さんが取り出したとき。
なので、その確率は
$\dfrac{4^{2}}{6^{2}}$
となる。

よって、このとき、事象$B_{0}$が起こる確率は
$\dfrac{5}{6}\times\dfrac{4^{2}}{6^{2}}$式J
である。


式Iと式Jの場合は同時に起こらないので、事象$B_{0}$が起こる確率$P(B_{0})$は、
$P(B_{0})=$式I$+$式J
$$ \begin{align} \phantom{P(B_{0})}&=\dfrac{1}{6}\times\dfrac{5^{2}}{6^{2}}+\dfrac{5}{6}\times\dfrac{4^{2}}{6^{2}}\\ &=\dfrac{5(5+4^{2})}{6\times 6^{2}}\\ &=\dfrac{5\times \textcolor{dodgerblue}{\cancelto{7}{\textcolor{black}{21}}}}{\textcolor{dodgerblue}{\cancelto{2}{\textcolor{black}{6}}}\times 6^{2}}\class{tex_formula}{式K}\\ &=\dfrac{35}{72} \end{align} $$ となる。

解答チ:3, ツ:5, テ:7, ト:2

(3)

(1)で行った作業から、
$\left\{\begin{array}{l} P(A_{2})=\dfrac{1}{15}\class{tex_formula}{式B}\\ P(A_{0})=\dfrac{6}{15}\class{tex_formula}{式D} \end{array}\right.$
であることが分かっている。

また、二人が試行Aを1回ずつ行う場合、$A_{2}$,$A_{1}$,$A_{0}$以外の事象は起こらないから
$P(A_{2})+P(A_{1})+P(A_{0})=1$
とかける。

これに式B,式Dを代入すると、
$\dfrac{1}{15}+P(A_{1})+\dfrac{6}{15}=1$
より

$$ \begin{align} P(A_{1})&=1-\dfrac{1}{15}-\dfrac{6}{15}\\ &=\dfrac{8}{15} \end{align} $$ であることが分かる。

以上より、$P(A_{2})$,$P(A_{1})$,$P(A_{0})$のうち最大のものは
$P(A_{1})$ である。

解答ナ:1


また、(2)で行った作業から、
$\left\{\begin{array}{l} P(B_{2})=\dfrac{5}{3\times 6^{2}}\class{tex_formula}{式F}\\ P(B_{0})=\dfrac{5\times 21}{6\times 6^{2}}\class{tex_formula}{式K} \end{array}\right.$
であることが分かっている。

式Fはさらに $$ \begin{align} P(B_{2})&=\dfrac{5}{3\times 6^{2}}\\ &=\dfrac{2\times 5}{2\times 3\times 6^{2}}\\ &=\dfrac{10}{6^{3}}\class{tex_formula}{式F'} \end{align} $$

式Kはさらに $$ \begin{align} P(B_{0})&=\dfrac{5\times 21}{6\times 6^{2}}\\ &=\dfrac{105}{6^{3}}\class{tex_formula}{式K'} \end{align} $$

と計算できる。

また、二人が試行Bを2回ずつ行う場合、$B_{2}$,$B_{1}$,$B_{0}$以外の事象は起こらないから
$P(B_{2})+P(B_{1})+P(B_{0})=1$
とかける。

これに式F',式K'を代入すると
$\dfrac{10}{6^{3}}+P(B_{1})+\dfrac{105}{6^{3}}=1$
より $$ \begin{align} P(B_{1})&=1-\dfrac{10}{6^{3}}-\dfrac{105}{6^{3}}\\ &=\dfrac{6^{3}-(10+105)}{6^{3}}\\ &=\dfrac{101}{6^{3}} \end{align} $$ であることが分かる。。

以上より、$P(B_{2})$,$P(B_{1})$,$P(B_{0})$のうち最大のものは
$P(B_{0})$ である。

解答ニ:0