大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説

(1)

まず、相関係数についての復習から。

復習

ふたつのデータに
正の相関がある場合、
一方が大きくなると もう一方も大きくなる
負の相関がある場合、
一方が大きくなると もう一方は小さくなる
傾向がある。

復習より、「スポーツ好き」と「反復横とび」に負の相関がある場合、
「スポーツ好き」が増えると「反復横とび」は減る 傾向があることになる。

なので、選択肢のうち正しいものは

である。

解答ス:1

(2)

散布図と相関係数についても復習しておく。

復習

以下の散布図は、横軸・縦軸ともに矢印方向が大きい値とする。

大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅠA 第2問 [2] 復習図

左端の散布図のように すべての点が右上がりの直線上に分布していれば、相関係数は$+1$ 右端の図のように 右下がりの直線上に分布していれば、相関係数は$-1$ 点の分布が直線的な配置から乱れるにつれて、相関係数は$0$に近づく

ただし、点が直線的に分布していても、次の図のように縦軸や横軸に平行なときには、相関係数は$0$に近い値になる。

大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅠA 第2問 [2] 復習図

(誤解しないでほしいのだけど、分布の傾きが$0$に近づけば相関係数も$0$に近づくという意味ではない。このへんについてはページをつくって詳しく解説したいけど、当分先の話になるかも。)

特に、下の図のように点が完全に軸に平行に分布しているとき、相関係数は計算できないため存在しない。

大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅠA 第2問 [2] 復習図

問題文中の図2も図3も、点は直線的には分布していない。
なので、両方とも相関係数は$0$に近い値をとると考えられる。
図2のデータの相関係数は$0.07$であるとも書いてあるし。

よって、図3のデータの相関係数は、選択肢のうち最も$0$に近い

であると考えられる。

解答セ:2

(3)

(i)

ここで、分散について復習しておく。

復習

大きさ$n$のデータ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$があり、
データの平均値を$\overline{x}$ データの各値の2乗の平均値を$\overline{x^{2}}$ とするとき、分散$s^{2}$は
$$ \begin{align} s^{2}&=\dfrac{1}{n}\left\{ \begin{aligned} (x_{1}-\overline{x})^{2}+&(x_{2}-\overline{x})^{2}+\\ &\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2} \end{aligned}\right\}\\ &=\overline{x^{2}}-\left(\overline{x}\right)^{2} \end{align} $$ とかける。

このふたつの式は問題によって使い分けるので、両方憶えておこう。

データ$W$の

$x$の平均$\overline{x}$は、
$$ \begin{align} \overline{x}&=\dfrac{1}{6}\left(-1+1-2+0+0+2\right)\\ &=0 \end{align} $$

解答ソ:0

$x$の分散$s_{x}^{2}$は、復習のどちらの式を使っても、
$$ \begin{align} s_{x}^{2}&=\dfrac{1}{6}\left\{\begin{aligned}(-1)^{2}+& 1^{2}+(-2)^{2}\\& +0^{2}+0^{2}+2^{2}\end{aligned}\right\}\\ &=\dfrac{1+1+4+4}{6}\\ &=\dfrac{5}{3} \end{align} $$

解答タ:7

である。

また、$y$は、$x$と同じ値を並べ替えただけなので、

平均$\overline{y}=\overline{x}=0$

分散$s_{y}^{2}=s_{x}^{2}$式A

となる。

ここで

復習

標準偏差は分散の正の平方根なので、
分散を$s^{2}$とすると、標準偏差$s$は
$s=\sqrt{s^{2}}$
である。

復習より、式Aはさらに
標準偏差$s_{y}=s_{x}$式B と変形できる。


これまでの計算から、問題文中の「表1 計算表」を完成させると表Aのようになる。

表A
$x$ $y$$x-\overline{x}$ $y-\overline{y}$ $\left(x-\overline{x}\right)\left(y-\overline{y}\right)$
$-1$ $1$$-1$ $1$ $-1$
$1$ $-1$$1$ $-1$ $-1$
$-2$ $0$$-2$ $0$ $0$
$0$ $-2$$0$ $-2$ $0$
$0$ $2$$0$ $2$ $0$
$2$ $0$$2$ $0$ $0$

さらに、共分散についての復習だ。

復習

データ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$と$\{y_{1},y_{2},\cdots,y_{n}\}$があり、
それぞれの平均値を$\overline{x}$,$\overline{y}$ とするとき、$\{x\}$と$\{y\}$の共分散$s_{xy}$は
$s_{xy}=\dfrac{1}{n}\left\{\begin{aligned}&(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})\\&\quad+(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})+\\&\qquad\cdots+(x_{n}-\overline{x})(y_{n}-\overline{y})\end{aligned}\right\}$
式C
である。

表Aと復習の式Cより、共分散$s_{xy}$は
$$ \begin{align} s_{xy}&=\dfrac{1}{6}\times\left(-1-1+0+0+0+0\right)\\ &=-\dfrac{1}{3} \end{align} $$ となる。

解答チ:5

(ii)

相関係数についての復習もしておこう。

復習

データ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$と$\{y_{1},y_{2},\cdots,y_{n}\}$があり、
それぞれの標準偏差を$s_{x}$,$s_{y}$ $\{x\}$と$\{y\}$の共分散を$s_{xy}$ とするとき、$\{x\}$と$\{y\}$の相関係数$r_{xy}$は
$r_{xy}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$式D
である。

いま、

より
$s_{xy}=-\dfrac{1}{3}$

式Bより
$s_{x}\cdot s_{y}=s_{x}^{2}$
となるから、これにを代入して
$s_{x}\cdot s_{y}=\dfrac{5}{3}$

だ。

これを復習の式Dに代入すると、
$$ \begin{align} r_{xy}&=\dfrac{-\cfrac{1}{3}}{\cfrac{5}{3}}\\ &=-\dfrac{1}{5} \end{align} $$ が求められる。

解答ツ:3

(4)

(4)では相関係数が正であるための必要十分条件を問われている。

(3)で復習したように、相関係数を求める式は
$r_{xy}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$式D
だった。

式Dの分母は標準偏差の積なので、正の数だ。 標準偏差が$0$になることもあるけれど、データ$W'$の場合は明らかに$0$じゃない。

なので、問題文にもあるように、相関係数が正であるための必要十分条件は、共分散が正であることである。

また、 (3)で復習したように、共分散を求める式は
$s_{xy}=\dfrac{1}{n}\left\{\MIDORI{\begin{aligned}&(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})\\&\quad+(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})+\\&\qquad\cdots+(x_{n}-\overline{x})(y_{n}-\overline{y})\end{aligned}}\right\}$
式C
だった。

式Cの$n$は正の数だから、共分散が正であることの必要十分条件は、式Cの緑の部分が正であることだ。

ちなみに、表Aで計算した
$(x-\overline{x})(y-\overline{y})$
を、偏差の交差積という。
式Cの緑の部分は、偏差の交差積の和である。

以上より、相関係数が正であるための必要十分条件は、
偏差の交差積の和が正 であることだと分かる。


ということで、データ$W'$で 偏差の交差積の和を求めよう。

データ$W'$の$x$,$y$ともに値の和は$0$だから、平均値も$0$だ。
なので、偏差の交差積は$xy$と等しい。

したがって、偏差の交差積の和は
$\begin{aligned}-1\cdot 1+1\cdot(-1)&+(-1-a)(1-a)\\&+(1-a)(-1-a)\\&+(-1+a)(1+a)\\&+(1+a)(-1+a)\end{aligned}$

途中式 $\begin{aligned}=-2& -(1+a)(1-a)\\& -(1-a)(1+a)\\& -(1-a)(1+a)\\& -(1+a)(1-a)\end{aligned}$
$=-2-4(1+a)(1-a)$
$=-2-4+4a^{2}$
$=2(2a^{2}-3)$
となる。

これが正であればよいので、
$2(2a^{2}-3) \gt 0$
より
$2a^{2} \gt 3$
$a^{2} \gt \dfrac{3}{2}$

問題文より $a$ は正の数なので、
$a \gt \sqrt{\dfrac{3}{2}}$

分母を有理化して、求める$a$の範囲は
$a \gt \dfrac{\sqrt{6}}{2}$
である。

解答テ:6, ト:2