大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学Ⅰ 第3問 [1] 解説
(1)
(i)
$f(x)=-1$
の解は
$x^{2}-4x+1=0$
より
$$
\begin{align}
x&=\dfrac{4\pm\sqrt{4^{2}-4\cdot 1\cdot 1}}{2}\\
&=\dfrac{4\pm 2\sqrt{3}}{2}
\end{align}
$$
なので
$x=2\pm\sqrt{3}$
となる。
よって、 $y=f(x)$ と直線 $y=-1$ の交点は
$\left(2-\sqrt{3},-1\right)$,$\left(2+\sqrt{3},-1\right)$式A
だから、グラフを描くと図Aができる。
図Aより、$f(x)\leqq-1$ の解は
$2-\sqrt{3}\leqq x\leqq 2+\sqrt{3}$
である。
解答ア:2, イ:3
(ii)
2次関数のグラフは左右対称だから、放物線の軸は図Aの2つの赤い点の中点を通る。
この中点の$x$座標は、式Aより
$\dfrac{\left(2-\sqrt{3}\right)+\left(2+\sqrt{3}\right)}{2}=2$
なので、放物線の軸は 点$\left(2,-1\right)$ を通る。
よって、放物線の軸の式は
$x=2$
である。
解答ウ:2
放物線の軸、つまり頂点の$x$座標を$f(x)$に代入すると、頂点の$y$座標は
$f(2)=2^{2}-4\cdot 2=-4$
となる。
$y=f(x)$のグラフは下に凸の放物線だから、これが最小値だ。
解答エ:-, オ:4
別解
$f(x)$の式を平方完成して解くと、次のようになる。
$$
\begin{align}
y&=f(x)\\
&=x^{2}-4x
\end{align}
$$
を平方完成すると、
$$
\begin{align}
y&=x^{2}-4x+4-4\\
&=(x-2)^{2}-4
\end{align}
$$
となる。
よって、
放物線の軸は
$x=2$
解答ウ:2
$y=f(x)$のグラフは下に凸の放物線だから、最小値は頂点の$y$座標なので、
最小値$=-4$
解答エ:-, オ:4
となる。
(iii)
$0\leqq x\leqq 3$ を緑で図Aに描き込むと、図Bができる。
図Bより、$f(x)$が最大値をとるのは$x=0$のとき。
$f(x)$に$x=0$を代入すると、最大値は
$$
\begin{align}
f(0)&=0^{2}-4\cdot 0\\
&=0
\end{align}
$$
となる。
解答カ:0
(2)
(1)の$\FB{エオ}$は、頂点の$y$座標
$y=f(x)$ のグラフは下に凸の放物線
だった。
$\ $※
下に凸の放物線の最小値が頂点
$\qquad\Updownarrow$
定義域に頂点が含まれる
なので、求める必要十分条件は、
$ 0\leqq$頂点の$x$座標$\leqq s$
とかける。
これに頂点の$x$座標を代入すると
$0\leqq 2\leqq s$
なので、このときの$s$の範囲は
$2\leqq s$
となる。
解答キ:2
また、$0 \lt s \lt 2$ のときの$x$の範囲を緑で表すと、図Cができる。
$y=f(x)$ が最小になるのは、図中の赤い点だ。
よって、最小値は
$f(s)=s^{2}-4s$
である。
解答ク:6
(3)
$y=g(x)$ のグラフは下に凸の放物線だ。
$$
\begin{align}
y&=g(x)\\
&=x^{2}-4kx
\end{align}
$$
を因数分解すると
$y=x(x-4k)$
とかけるから、$y=g(x)$ と $x$軸は
$(0,0)$,$(4k,0)$
で交わる。
また、この2つの交点の中点は
$\left(\dfrac{0+4k}{2},0\right)=(2k,0)$
なので、頂点の$x$座標$p$は
$p=2k$
である。
さらに、$0 \lt k$ だから、$y=g(x)$ のグラフは図Dのようになっている。
(i)
$y=g(x)$のグラフは下に凸の放物線なので、図Dおよび※より、求める必要十分条件は
$0\leqq 2k\leqq s$
とかける。
$0 \lt k$ なので $0\leqq 2k$ は明らかなので省略すると、このときの必要十分条件は
$2k\leqq s$式B
となる。
解答ケ:3
(ii)
ここで、命題の真偽と集合について復習をしておこう。
命題の真偽と集合の復習
命題「[仮定]であれば[結論]である」について、
[仮定]が[結論]に含まれていれば真
[仮定]が[結論]からはみ出していれば偽
である。
これをベン図で説明すると、[仮定]の集合を赤、[結論]の集合を青として、命題が真になるのは図Eのような場合である。
また、命題が偽になるのは図Fのような場合だ。
反例は、[仮定]には含まれるけれど[結論]には含まれない部分にあたる。
なので、図Bの、赤い斜線はあるけど青い斜線はない部分が反例である。
復習が頭に入ったところで問題にもどる。
(i)より、最小値が$q$であることの必要十分条件は
$2k\leqq s$式B
だった。
つまり、「最小値が$q$」と 式Bは同じ集合だ。
よって、
命題(a)は
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\\
s=k+1
\end{array}\right.$ ならば $2k\leqq s$(式B)である
命題(a)'
命題(b)は
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\\
s=3k-1
\end{array}\right.$ ならば $2k\leqq s$(式B)である
命題(b)'
と言いかえられることが分かる。
ということで、命題(a)',(b)'をひとつずつ検討する。
式Bの $2k\leqq s$ と比較するので、方針は
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\\
s=k+1
\end{array}\right.$
と
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\\
s=3k-1
\end{array}\right.$
から
$2k$と$s$の大小関係を求める
だ。
(a)'
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\TF{式C}\\
s=k+1\TF{式D}
\end{array}\right.$
のとき
$2k$と$s$の大小関係を求めるから、
$2k-s$
を考える。
この式に式Dを代入すると、
$2k-(k+1)=k-1$式E
だ。
式Cの両辺から$1$を引くと、
$k-1 \gt 0$
となるから、式Eは正である。
よって、このとき、
$2k-s \gt 0$
より
$s \lt 2k$式F
とかける。
別解1
思いつきにくいかも知れないけれど、直接式Fをつくることもできる。
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\TF{式C}\\
s=k+1\TF{式D}
\end{array}\right.$
のとき
式Cの左辺と右辺を逆にした
$1 \lt k$
と式Dを辺々たすと、
| $1$ | $ \lt $ | $k$ | ||
| $+)$ | $s$ | $=$ | $k$ | $+1$ |
| $s+1$ | $ \lt $ | $2k$ | $+1$ |
より
$s \lt 2k$式F
とかける。
別解2
手間がかかるから共通テスト本番ではおすすめしないけど、次の方法が一番イメージがつかみやすいかもしれない。
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\TF{式C}\\
s=k+1
\end{array}\right.$
のときの $2k$と$s$の大小関係を求める。
$\left\{\begin{array}{l}
y=2k\\
y=s=k+1
\end{array}\right.$
とおいて、縦軸が$y$,横軸が$k$の座標平面上にグラフを描くと、図Gができる。
式Cより、いまは $1 \lt k$ の範囲を考えている。
図Gより、この範囲では$y=2k$のグラフが上にあるので、
$s \lt 2k$式F
とかける。
したがって、命題(a)'は
$s \lt 2k$(式F)ならば $2k\leqq s$(式B)である
と言いかえることができる。
式Fと式Bの関係を数直線で表すと図Hになる。
図Hより、式Fの範囲は式Bの範囲に含まれていない。
したがって、復習より、命題(a)は偽である。
(b)'
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\TF{式C}\\
s=3k-1\TF{式G}
\end{array}\right.$
のとき
$2k-s$
に式Gを代入すると、
$2k-(3k-1)=-k+1$式H
だ。
式Cの両辺に$-1$をかけてから$1$をたすと、
$-k \lt -1$
$-k+1 \lt 0$
となるから、式Hは負である。
よって、このとき、
$2k-s \lt 0$
より
$2k \lt s$式I
とかける。
別解1
(a)'の別解1と同様に、直接式Iをつくることもできる。
式Cと式Gを辺々たすと、
| $k$ | $ \gt $ | $1$ | ||
| $+)$ | $s$ | $=$ | $3k$ | $-1$ |
| $k+s$ | $ \gt $ | $3k$ |
より
$s \gt 2k$式I
とかける。
別解2
(a)'の別解2の方法を使うと、次のようになる。
$\left\{\begin{array}{l}
k \gt 1\\
s=3k-1
\end{array}\right.$
のときの $2k$と$s$の大小関係を求める。
$\left\{\begin{array}{l}
y=2k\\
y=s=3k-1
\end{array}\right.$
とおいて、縦軸が$y$,横軸が$k$の座標平面上にグラフを描くと、図Iができる。
図Iより、$1 \lt k$ の範囲では $y=s$ のグラフが上にあるので、
$s \gt 2k$式I
とかける。
なので、命題(b)'は
$2k \lt s$(式I)ならば $2k\leqq s$(式B)である
と言いかえることができる。
式Iと式Bの関係を数直線で表すと図Jになる。
図Jより、式Iの範囲は式Bの範囲に含まれている。
したがって、復習より、命題(b)は真である。
以上より、解答群のうち正しいものは
②
であることが分かる。
解答コ:2