大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅡBC 第7問 解説

(1)

(i)

$\left|z-1\right|$ は、点 $z$ と点 $1$ の距離
$\left|z+1\right|$ は、点 $z$ と点 $-1$ の距離

だ。

よって、
$\left|z-1\right|+\left|z+1\right|=4$

点 $z$ と点 $1$ の距離と、、点 $z$ と点 $-1$ の距離の和が $4$ であることを表している。

解答ア:1


(ii)

$z=x+yi$
とおくと、
$z-1=\left(x-1)+yi\right.$
だから、
$\left|z-1\right|=\sqrt{(x-1)^{2}+y^{2}}$
$z+1=\left(x+1)+yi\right.$
だから、
$\left|z+1\right|=\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}$
とかける。

なので、方程式①は
$\sqrt{(x-1)^{2}+y^{2}}+\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}=4$
より
$\sqrt{(x-1)^{2}+y^{2}}=4-\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}$
と変形できる。

解答イ:4, ウ:2

この両辺を2乗して、
$$ \begin{align} &(x-1)^{2}+y^{2}\\ &\qquad=16-8\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}+(x+1)^{2}+y^{2}\\ & x^{2}-2x+1\\ &\qquad=16-8\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}+x^{2}+2x+1 \end{align} $$ $-4x-16=-8\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}$
$x+4=2\sqrt{(x+1)^{2}+y^{2}}$

解答エ:3

この両辺をもう一度2乗すると
$(x+4)^{2}=2^{2}\{(x+1)^{2}+y^{2}\}$
$x^{2}+8x+16=4x^{2}+8x+4+4y^{2}$
$12=3x^{2}+4y^{2}$

両辺を$12$で割って、
$\dfrac{3}{12}x^{2}+\dfrac{4}{12}y^{2}=1$
$\dfrac{x^{2}}{4}+\dfrac{y^{2}}{3}=1$
となる。

解答オ:1


(iii)

ここで、楕円の定義の復習をしておく。

復習

2つの焦点との距離の和が一定であるような点の軌跡を楕円という。
距離の和が長軸の長さにあたる。

で考えたように、$z$ は
点 $z$ と点 $1$ の距離と、、点 $z$ と点 $-1$ の距離の和が $4$ であるような点だった。

したがって、点 $z$ の全体は、
2点 $1$,$-1$ を焦点とし、長軸の長さが $4$ の楕円 になる。

解答カ:2

別解

楕円の式について復習する。

復習

楕円の式の標準の形は
$\dfrac{x^{2}}{a^{2}}+\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=1\qquad(a \gt 0,b \gt 0)$
で、

$a \gt b$ のとき
焦点が $\left(\sqrt{a^{2}-b^{2}},0\right)$,$\left(-\sqrt{a^{2}-b^{2}},0\right)$ 中心が $(0,0)$ 長軸の長さ$=$楕円上の点からふたつの焦点までの距離の和が $2a$ 短軸の長さが $2b$

$a \lt b$ のとき
焦点が $\left(0,\sqrt{b^{2}-a^{2}}\right)$,$\left(0,-\sqrt{b^{2}-a^{2}}\right)$ 中心が $(0,0)$ 長軸の長さ$=$楕円上の点からふたつの焦点までの距離の和が $2b$ 短軸の長さが $2a$

である。

方程式②はさらに
$\dfrac{x^{2}}{2^{2}}+\dfrac{y^{2}}{\sqrt{3}^{2}}=1$
と変形できる。

よって、復習より、この式が表す図形は楕円である。

この楕円の
焦点は
$\sqrt{2^{2}-\sqrt{3}^{2}}=1$
なので、
$(1,0)$,$(-1,0)$
長軸の長さは
$2\times 2=4$
だ。

図A
大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅡBC 第7問 解説図A

よって、方程式②が表す図形は、図Aのような
2点 $(1,0)$,$(-1,0)$ を焦点とし、長軸の長さが $4$ の楕円 である。

これを複素数平面で表すと、方程式①を満たす複素数$z$の全体は
2点 $1$,$-1$ を焦点とし、長軸の長さが $4$ の楕円 になる。

解答カ:2

(2)

復習

複素数$w$,$z$があり、
$w=r(\cos\theta+i\sin\theta)\cdot z$
のとき、点$w$は、点$z$を
原点を中心に$\theta$回転 原点からの距離を$r$倍 した点である。

復習より、点$w$が点$z$を原点を中心に$\dfrac{\pi}{4}$回転した点であるとき、
$w=\textcolor{red}{\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)}\cdot z$式A
とかける。

解答キ:7


また、点$w$が動く図形は、図Aを原点を中心に$\dfrac{\pi}{4}$回転した、図Bの赤い楕円だ。

図B
大学入学共通テスト2025年追試 数学ⅡBC 第7問 解説図B

(1) より、赤い楕円の式は
$\biggl|z-[\text{一方の焦点}]\biggr|+\biggl|z-[\text{他方の焦点}]\biggr|=4$
式B
とかけることが分かる。

式B中の焦点は、回転前の焦点を原点を中心に $\dfrac{\pi}{4}$ 回転したものだ。

回転前の焦点 $1$ を$\dfrac{\pi}{4}$回転すると
$$ \begin{align} & 1\times\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)\\ &\qquad =\left( \dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right) \end{align} $$

同様に、回転前の焦点 $-1$ を回転すると
$$ \begin{align} & -1\times\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)\\ &\qquad =-\left( \dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right) \end{align} $$

この二つの焦点を式Bに代入して、図Bの赤い楕円の式、つまり点$w$が満たす式は
$$ \begin{align} &\left|w-\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right)\right|\\ &\hspace{100px} +\left|w+\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right)\right|=4 \end{align} $$ である。

解答ク:4

別解

上の解では図で考えたけれど、式だけで解くと次のようになる。

式Aの赤い部分を $\beta$ とおくと、
$w=\beta z$
$z=\dfrac{w}{\beta}$
と表せる。

これを方程式①に代入して、
$\left|\dfrac{w}{\beta}-1\right|+\left|\dfrac{w}{\beta}+1\right|=4$

この両辺に$\left|\beta\right|$をかけると
$\left|\beta\right|\left|\dfrac{w}{\beta}-1\right|+\left|\beta\right|\left|\dfrac{w}{\beta}+1\right|=4\left|\beta\right|$
$\left|w-\beta\right|+\left|w+\beta\right|=4\left|\beta\right|$
となるけど、$\left|\beta\right|=1$ なので
$\left|w-\beta\right|+\left|w+\beta\right|=4$
だ。

この式の$\beta$をもとにもどすと、点$w$が満たす式は
$$ \begin{align} &\left|w-\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right)\right|\\ &\hspace{100px} +\left|w+\left(\dfrac{\sqrt{2}}{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}i\right)\right|=4 \end{align} $$ である。

解答ク:4

(3)

最後に、点 $z$ を原点を中心に回転させた点を点 $\alpha$ とするとき、解答群のうちから 点 $\alpha$ が満たす方程式をさがす。

何だかよく分からないかも知れないけれど、要するに、
選択肢のうち、の図形(図A)を原点を中心に回転させてできるものはどれか ということだ。

の図形(図A)は
2点 $1$,$-1$ を焦点とし、長軸の長さが $4$ の楕円 だった。

なので、これを回転させた図形は
 ※ $\text{一方の焦点}=\text{他方の焦点}\times(-1)$
$\left|\text{一方の焦点}\right|=\left|\text{他方の焦点}\right|=1$
長軸の長さが $4$

の楕円
になる。

解答群から、これを満たすものをさがす。


長軸の長さが$6$なので不適。

焦点 $3$ は、
$\left|3\right|\neq 1$ なので不適。

焦点 $\dfrac{1}{2}$ は、
$\left|\dfrac{1}{2}\right|\neq 1$ なので不適。

焦点 $1+\sqrt{3}i$ は、
$\left|1+\sqrt{3}i\right|\neq 1$ なので不適。

焦点 $\sqrt{2}$ は、
$\left|\sqrt{2}\right|\neq 1$ なので不適。

焦点 $i$,$-i$ は $i=-i\times(-1)$ $\left|i\right|=\left|-i\right|=1$ 長軸の長さが $4$ の楕円なので、※を満たす。
これが答えだ。

以上より、解答群のうち正しいものは

である。

解答ケ:5