大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅡBC 第6問 解説
(1)
図Aのように、
$\left\{\begin{array}{l}
\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\vec{a}\\
\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\vec{b}\\
\overrightarrow{\mathrm{OM}}=\vec{m}
\end{array}\right.$
とする。
また、点$\mathrm{M}$を通り、$\mathrm{OB}$と平行な直線を$\ell$とする。
図Aは空間ベクトルを平面に表しているので赤い3つのベクトルは同一平面上にあるように見えるけど、必ずしもそうじゃないので注意。
(i)
図Aより、
直線$\mathrm{OA}$上にある点$\mathrm{P}$の位置ベクトルは、$s$を実数として
$$
\begin{align}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}&=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}\\
&=s\vec{a}\class{tex_formula}{式A}
\end{align}
$$
直線$\ell$上の点$\mathrm{Q}$の位置ベクトルは、$t$を実数として
$\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\overrightarrow{\mathrm{OM}}+\overrightarrow{\mathrm{MQ}}$
とかけるけど、$\overrightarrow{\mathrm{MQ}} \HEIKOU \overrightarrow{\mathrm{OB}}$ なので
$$
\begin{align}
\overrightarrow{\mathrm{OQ}}&=\overrightarrow{\mathrm{OM}}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}}\\
&=\vec{m}+t\vec{b}\class{tex_formula}{式B}
\end{align}
$$
解答ア:3
と表せる。
式A$=$式B、つまり
$s\vec{a}=\vec{m}+t\vec{b}$①
となる実数$s$,$t$が存在するとき、点$\mathrm{P}$と点$\mathrm{Q}$は一致する。
したがって 直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$の共有点が存在するから、二直線は交わる。
(ii)
$\vec{m}=(2,3,5)$ のとき、①式は
$s(0,-3,1)=(2,3,5)+t(1,0,3)$
より
$(0,-3s,s)=(2+t,3,5+3t)$②
とかける。
解答イ:3, ウ:1, エ:5
このとき、②式の
$y$成分より、
$-3s=3$
$s=-1$
解答オ:-, カ:1
$x$成分より、
$0=2+t$
$t=-2$
解答キ:-, ク:2
だ。
これを$z$成分に代入すると
$$
\begin{align}
-1&=5+3\cdot(-2)\\
&=-1
\end{align}
$$
となって成り立つ。
よって、②式を満たす実数$s$,$t$が存在するから、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わる。
また、二直線の交点の座標は、$s=-1$ を式Aに代入した
$-1\cdot(0,-3,1)=(0,3,-1)$
である。
解答ケ:0, コ:3, サ:-, シ:1
(iii)
$\vec{m}=(2,3,-5)$ のとき、①式は
$s(0,-3,1)=(2,3,-5)+t(1,0,3)$
より
$(0,-3s,s)=(2+t,3,-5+3t)$③
とかける。
解答ス:7
③式と②式の違いは$z$成分だけなので、
②式の$y$成分から求めた $s=-1$
②式の$x$成分から求めた $t=-2$
は、③式でも変わらない。
これを③式の$z$成分に代入すると
$$
\begin{align}
-1&=-5+3\cdot(-2)\\
&=-11
\end{align}
$$
となって成り立たない式ができる。
よって、③式を満たす実数$s$,$t$は存在しないから、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わらない。
(2)
$\vec{e}=(0,0,1)$
とする。
3つのベクトル $\vec{a}$,$\vec{b}$,$\vec{e}$ は同一平面上にないから、点$\mathrm{M}$が座標空間のどこにあっても、$\vec{m}$は
$\vec{m}=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}+\gamma\vec{e}$④
の形でただ一通りに表せる。
(i)
ということで、$\vec{m}=(2,3,5)$ を④式の形で表してみよう。
初めから計算するのは面倒なので、これまでの作業を振り返って役に立ちそうなものをさがすと、(1)(ii) で求めた
$\vec{m}=(2,3,5)$ のとき、①式が成り立つ$s$,$t$ は
$\left\{\begin{array}{l}
s=-1\\
t=-2
\end{array}\right.$
が使えそうだ。
①式に$s=-1$,$t=-2$ を代入すると、
$-1\vec{a}=\vec{m}-2\vec{b}$
より
$$
\begin{align}
\vec{m}&=-\vec{a}+2\vec{b}\\
&=-1\vec{a}+2\vec{b}+0\vec{e}
\end{align}
$$
と表せる。
なので、$\vec{m}=(2,3,5)$ を④式の形で表すと、
$\left\{\begin{array}{l}
\alpha=-1\\
\beta=2\\
\gamma=0
\end{array}\right.$
である。
解答セ:-, ソ:1, タ:2, チ:0
よって、
$(2,3,5)=-\vec{a}+2\vec{b}$式C
とかける。
(ii)
次は、$\vec{m}=(2,3,-5)$ を④式の形で表す。
$\vec{m}=(2,3,-5)$ を問題文の指示に従って変形すると
$\vec{m}=(2,3,5)+(0,0,-10)$
なので
$\vec{m}=(2,3,5)-10\vec{e}$
と表せる。
解答ツ:1, テ:0
これに式Cを代入すると
$\vec{m}=-\vec{a}+2\vec{b}-10\vec{e}$式D
となるから、このとき、
$\left\{\begin{array}{l}
\alpha=-1\\
\beta=2\\
\gamma=-10
\end{array}\right.$
である。
解答ト:-, ナ:1, ニ:0
(iii)
直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$が交わるとき、つまり ①を満たす実数実数$s$,$t$が存在するとき、
$s\vec{a}=\vec{m}+t\vec{b}$
より
$\vec{m}=s\vec{a}-t\vec{b}$
とかける。
解答ヌ:0, ネ:3
これを④式の形にすると
$\vec{m}=s\vec{a}-t\vec{b}+0\vec{e}$
なので、二直線が交わるときは
$\gamma=0$
になる。
逆に、$\gamma=0$のとき、④式は
$$
\begin{align}
\vec{m}&=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}+0\vec{e}\\
&=\alpha\vec{a}+\beta\vec{b}
\end{align}
$$
とかける。
これを変形すると
$\alpha\vec{a}=\vec{m}-\beta\vec{b}$
となるから、①式を満たす
$\left\{\begin{array}{l}
s=\alpha\\
t=-\beta
\end{array}\right.$
が存在し、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わる。
以上より、
※
直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$が交わる$\ \Leftrightarrow\ \gamma=0$
といえる。
(3)
$\vec{c}=(2,3,5)$,$\vec{d}=(2,3,-5)$ は、式C,式Dより
$\left\{\begin{array}{l}
\vec{c}=-\vec{a}+2\vec{b}\\
\vec{d}=-\vec{a}+2\vec{b}-\textcolor{red}{10\vec{e}}
\end{array}\right.$
と表せる。
なので、$\vec{a}$,$\vec{b}$,$\vec{c}$,$\vec{d}$ の4つのベクトルのうち、$\vec{e}$ が含まれているのは $\vec{d}$ だけだ。
よって、ベクトル $\vec{m}$ が $\vec{a}$,$\vec{b}$,$\vec{c}$,$\vec{d}$ で表されているとき、$\vec{m}$ を④式の形で表した場合に
$\vec{d}$ が含まれなければ $\gamma = 0$
$\vec{d}$ が含まれれば $\gamma \neq 0$
となる。
このことと※をあわせると、
※※
$\vec{m}$ の式に $\vec{d}$ が
含まれていないとき、二直線は交わる
含まれているとき、二直線は交わらない
ことが分かる。
これを使って、(Ⅰ)~(Ⅲ) をひとつずつ考えよう。
$\vec{m}$ の式には $\vec{d}$ が含まれていない。
よって、※※より、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わる。
解答ノ:0
$\vec{m}$ の式には $\vec{d}$ が含まれている。
よって、※※より、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わらない。
解答ハ:1
$\vec{m}$ の式には $\vec{d}$ が含まれている。
よって、※※より、直線$\mathrm{OA}$と直線$\ell$は交わらない。
解答ヒ:1