大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 追試 数学ⅡBC 第5問 解説
(1)
この解説では、 「番号「777」のカード」 を [777] 「番号の下二桁が「22」のカード」 を [*22] 「番号の下一桁が「1」のカード」 を [**1] と書く。
箱の中に
カードは全部で$1000$枚
[777]のカードは$1$枚
[*22]のカードは、上一桁が 0~9 の$10$枚
[**1]のカードは、上二桁が 00~99 の$100$枚
ある。
よって、
$X=2000$ になるのは [777] が出るときだから、
$p_{1}=\dfrac{1}{1000}$
$X=800$ になるのは [*22] が出るときだから、
$$
\begin{align}
p_{2}&=\dfrac{10}{1000}\\
&=\dfrac{1}{100}
\end{align}
$$
解答ア:1
$X=100$ になるのは [**1] が出るときだから、
$$
\begin{align}
p_{3}&=\dfrac{100}{1000}\\
&=\dfrac{1}{10}
\end{align}
$$
$X=0$ になるのは それ以外のカードが取り出されるときだから、
$$
\begin{align}
p_{4}&=\dfrac{1000-(1+10+100)}{1000}\\
&=\dfrac{889}{1000}
\end{align}
$$
解答イ:8, ウ:8, エ:9
である。
以上より、問題文中の確率分布表を完成させると表Aができる。
| $X$ | $2000$ | $800$ | $100$ | $0$ | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| $P$ | $\dfrac{1}{1000}$ | $\dfrac{1}{100}$ | $\dfrac{1}{10}$ | $\dfrac{889}{1000}$ | $1$ |
ここで、確率分布表から平均や分散を求める方法について復習しておく。
復習
| $X$ | $x_{1}$ | $x_{2}$ | $\cdots$ | $x_{n}$ | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| $P$ | $p_{1}$ | $p_{2}$ | $\cdots$ | $p_{n}$ | $1$ |
上のような確率分布表があるとき、
$X$の平均$E(X)$は、
$E(X)=x_{1}p_{1}+x_{2}p_{2}+\cdots+x_{n}p_{n}$
$X$の分散$V(X)$は、
$$
\begin{align}
V(X)&=\{x_{1}-E(X)\}^{2}p_{1}\\
&\qquad +\ \{x_{2}-E(X)\}^{2}p_{2}\ +\\
&\hspace{60px} \cdots+\{x_{n}-E(X)\}^{2}p_{n}\\
&\hspace{158px} \class{tex_formula}{式A}\\
&=E(X^{2})-\{E(X)\}^{2}\class{tex_formula}{式B}
\end{align}
$$
である。
分散を求めるふたつの式は 問題によって使い分けるので、両方憶えておこう。
表Aと復習より、$X$の
平均(期待値)$E(X)$は
$$
\begin{align}
E(X)&=2000\times\dfrac{1}{1000}+800\times\dfrac{1}{100}\\
&\qquad +100\times\dfrac{1}{10}+0\times\dfrac{889}{1000}\\
&=2+8+10\\
&=20\class{tex_formula}{①}
\end{align}
$$
解答オ:2, カ:0
分散$V(X)$は問題文中に書いてあるけど、せっかくだから練習しておこう。
問題文では、復習の式Aの方法で
$$
\begin{align}
V(X)=&\{x_{1}-E(X)\}^{2}p_{1}\\
&\hspace{20px}+\{x_{2}-E(X)\}^{2}p_{2}\\
&\hspace{40px}+\{x_{3}-E(X)\}^{2}p_{3}\\
&\hspace{60px}+\{x_{4}-E(X)\}^{2}p_{4}
\end{align}
$$
としてあるけれど、これを計算するのは面倒だ。
ここでは、式Bを使う。
表Aより、$X^{2}$の平均(期待値)$E(X^{2})$は
$$
\begin{align}
E(X^{2})&=2000^{2}\times\dfrac{1}{1000}+800^{2}\times\dfrac{1}{100}\\
&\qquad+100^{2}\times\dfrac{1}{10}+0^{2}\times\dfrac{889}{1000}\\
&=2\times 2000+8\times 800+10\times 100\\
&=100(40+64+10)\\
&=11400
\end{align}
$$
となる。
これと①式を式Bに代入すると、分散$V(X)$は
$$
\begin{align}
V(X)&=11400-20^{2}\\
&=11000\class{tex_formula}{②}
\end{align}
$$
である。
(2)
(i)
問題文中にあるように、得点$X$から$25$点を引いた差が損得点$Y$なので、
$Y=X-25$
とかける。
解答キ:2, ク:5
さらに、確率変数の変換の復習をしておこう。
復習
確率変数$X$の
期待値(平均)を$E(X)$
分散を$V(X)$
標準偏差を$\sigma(X)$
とする。
$X$と定数$a$,$b$を使って、確率変数$Y$を
$Y=aX+b$
と定める。
このとき、$Y$の
期待値(平均)$E(Y)=aE(X)+b$
分散 $V(Y)=a^{2}V(X)$
標準偏差 $\sigma(Y)=\sqrt{V(Y)}=\left|a\right|\sigma(X)$
である。
キク$=c$ とおくと、確率変数$X$と$Y$の関係は
$Y=X-c$
とかける。
なので、復習より、確率変数$Y$の
平均(期待値)$E(Y)$は
$E(Y)=E(X)-c$
解答ケ:1
これにそれぞれの値を代入すると、
$$
\begin{align}
E(Y)&=20-25\\
&=-5
\end{align}
$$
となる。
分散$V(Y)$は
$V(Y)=V(X)$
解答コ:0
これに②式を代入して、
$V(Y)=11000$
である。
アドバイス
問題文中に$Y$の確率分布表がある。
これを見ると、共通テスト本番のような気持ちに余裕がないときには、(1)のような計算をする気になりがちだ。
面倒な計算になってしまうので、惑わされないようにしよう。
(ii)
標本平均についても復習しておこう。
復習
母平均$\mu$,母標準偏差$\sigma$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには、$n$の値にかかわらず完全に、
母集団がその他の分布のときには、$n$が大きければ近似的に、
正規分布 $N\left(\mu,\dfrac{\sigma^{2}}{n}\right)$ に従う。
母平均$E(Y)$,母標準偏差$\sqrt{V(Y)}$の母集団から 大きさ$400$の標本を取り出す。
標本の大きさ$400$は十分に大きいとする。
このとき、標本平均$\overline{Y}$は、復習より
近似的に 正規分布
$N\left(E(Y),\dfrac{\sqrt{VY}^{2}}{400}\right)=N\left(E(Y),\dfrac{V(Y)}{400}\right)$
に従う
ことが分かる。
解答サ:5
これにそれぞれの値を代入すると、$\overline{Y}$が従う正規分布は
$$
\begin{align}
N\left(E(Y),\dfrac{V(Y)}{400}\right)&=N\left(-5,\dfrac{11000}{400}\right)\\
&=N\left(-5,\dfrac{110}{4}\right)
\end{align}
$$
であることが分かる。
損得点の合計が$0$以上のとき、損得点の平均、つまり標本平均$\overline{Y}$も$0$以上だ。
ということで、標本平均$\overline{Y}$が$0$以上になる確率を求める。
求める確率を$p$とおくと、$p$は図Bの緑の部分の面積だ。
この面積を求めるために正規分布表を見るんだけど、
正規分布表に載っているのは、標準正規分布の$N(0,1)$
図Bの正規分布は$N\left(-5,\dfrac{110}{4}\right)$
なので、そのままでは使えない。
$N\left(-5,\dfrac{110}{4}\right)$ を標準化して$N(0,1)$にしよう。
復習
確率変数を
平均が$0$
標準偏差が$1$
になるように変換することを、標準化という。
もとの確率変数$X$の
平均を$m$
標準偏差を$\sigma$
とすると、標準化された確率変数$Z$は
$Z=\dfrac{X-m}{\sigma}$
となる。
いま、図Bの正規分布の
分散は$\dfrac{110}{4}$なので、標準偏差は
$\sqrt{\dfrac{110}{4}}=\dfrac{\sqrt{110}}{2}$
平均は $-5$
だ。
よって、復習より、図Bの$0$を標準化すると
$\dfrac{0-(-5)}{\dfrac{\sqrt{110}}{2}}=\dfrac{10}{\sqrt{110}}$
だけど、問題文に$\sqrt{110}=10.5$との指示があるから、
$\dfrac{10}{10.5}\doteqdot 0.95$
となる。
したがって、図Bを標準化すると 図Cになる。
図Bと図Cの緑の部分の面積は等しい。
なので、求める確率$p$は図Cの緑の部分の面積だ。
正規分布表で$z_{0}=0.95$をさがすと、$0.3289$とある。
これは、図Cの黄色い部分の面積にあたる。
よって、求める緑の部分の面積、つまり確率$p$は、
$0.5-0.3289=0.1711$
である。
これに最も近い値は、シの選択肢のうち
⓪
だ。
解答シ:0
(3)
くじを3回引いて得点の合計が$1000$点になるのは、
[*22] を1回
[**1] を2回
引く場合だ。
なので、その確率は
$$
\begin{align}
\dfrac{1}{100}\times\left(\dfrac{1}{10}\right)^{2}\times {}_{3}\mathrm{C}_{1}&=\dfrac{3}{10000}\\
&=0.0003
\end{align}
$$
である。
解答ス:1
この後 問題文は長いけれど、要するに
標本平均の $16.75$
母標準偏差として、標本標準偏差の $75$
標本の大きさ $400$
を使って、信頼度 $95\%$ で母平均$m$の信頼区間を求めよということだ。
というわけで、母平均の推定について復習しておこう。
復習
母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{W}$,標本の大きさを$n$とすると、母平均$m$の信頼区間は
$\overline{W}-z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{W}+z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$
式C
とかける。
ただし、信頼度が$ c\%$のとき、$z$は、右図を標準正規分布の確率分布図として、図中の$z_{0}$の値。
特に
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$
信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$
である。
式Cに それぞれの値と 信頼度$ 95\%$なので $z=1.96$ を代入すると、求める$m$の信頼区間は
$$
\begin{align}
16.75-1.96\cdot &\dfrac{75}{\sqrt{400}}\\
&\hspace{34px} \leqq m\leqq\\
&\hspace{74px} 16.75+1.96\cdot\dfrac{75}{\sqrt{400}}
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
16.75-1.96\cdot\dfrac{75}{20}&\leqq m\leqq 16.75+1.96\cdot\dfrac{75}{20}\\
16.75-7.35&\leqq m\leqq 16.75+7.35\\
9.4&\leqq m\leqq 24.1
\end{align}
$$
となる。
解答セ:2
アドバイス
これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、共通テスト本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページを参照してほしい。