大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学Ⅰ 第4問 解説

(1)

最初に四分位数などの復習だ。

復習

第1四分位数
データの下位半分の中央値。
データの大きさが奇数のときは、全体の中央値を除いて偶数にし、その下位半分の中央値をとる。

第2四分位数
中央値に等しい。
データの大きさが偶数のときには、中央2数の平均値。

第3四分位数
データの上位半分の中央値。
データの大きさが奇数のときは、全体の中央値を除いて偶数にし、その上位半分の中央値をとる。

四分位範囲
第3四分位数$-$第1四分位数。

範囲
最大値$-$最小値。

復習より、29か国のデータを小さい順に並べると、図Aができる。

図A
大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 解説図A

図Aのように、
第1四分位数は、小さい方から7番目と8番目の値の平均値 中央値は、小さい方から(大きい方からでもいいけど)15番目の値 第3四分位数は、大きい方から7番目と8番目の値の平均値 だ。


これをもとに 問題文中の図1,図2に四分位数の位置などを書き込むと、図Bのようになる。

図B
大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 解説図B

図Bで、
緑は 第1四分位数が含まれる階級 黄色は 中央値が含まれる階級 青は 第3四分位数が含まれる階級 を表している。

また、
範囲は、オレンジの矢印の
$\hspace{40px}$太線部分 $\lt$ 範囲 $\lt$ 矢印全体
四分位範囲は、赤い矢印の
$\hspace{40px}$太線部分 $\lt$ 四分位範囲 $\lt$ 矢印全体
である。


図Bで2009年度と2018年度を比較すると、

中央値が含まれる階級(黄色い階級)は変わっていない

解答ア:2

第1四分位数が含まれる階級(緑の階級)も変わっていない

解答イ:2

第3四分位数が含まれる階級(青い階級)は
2009年度では$60$以上$75$未満 2018年度では$45$以上$60$未満 なので、階級値は2018年度の方が小さい

解答ウ:0

範囲(オレンジの矢印)は、
2009年では
9階級分の幅 $\lt$ 範囲
2018年では
範囲 $\lt$ 9階級分の幅
なので、2018年度の方が小さい

解答エ:0

四分位範囲(赤い矢印)は、
2009年では、
2階級分の幅 $\lt$ 四分位範囲 $\lt$ 4階級分の幅
2018年では、
1階級分の幅 $\lt$ 四分位範囲 $\lt$ 3階級分の幅
なので、どちらが大きいかは分からない。

解答オ:3

ことが分かる。

(2)

いつものように復習から始めよう。
今回は、箱ひげ図の復習だ。

復習

大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 復習図

以下、「2009年度における教育機関1機関あたりの学習者数」を、単に「学習者数」と書く。

復習より、問題文中の図3から、学習者数の

最小値は$50$前後
第1四分位数は$50$から$100$の間
第3四分位数は$200$から$250$の間
最大値は$450$から$500$の間

であることが分かる。

また、(1)の図Aで考えたように、

第1四分位数は
     小さい方から7番目と8番目の値の平均値
第3四分位数は
     大さい方から7番目と8番目の値の平均値

だった。

以上より、選択肢の散布図のうち、学習者数(横軸)を見て

左端の点が$50$前後条件A
左から$\hspace{10px}$7番目と8番目の点の
$\hspace{50px}$平均値が$50$から$100$の間
条件B
右から$\hspace{10px}$7番目と8番目の点の
$\hspace{50px}$平均値が$200$から$250$の間
条件C
右端の点が$450$から$500$の間条件D

を満たすものが正解だ。

これを頭に置いて、問題文中の選択肢の散布図をひとつずつ確認しよう。
以下の⓪~③に載せた値は、すべて学習者数(横軸)のものである。


右から7番目と8番目の点(図Cの赤い点)が、両方とも$250$より右にある。
なので、この2つの点の平均値も$250$より大きい。
条件Cに合わないので、不適。

図C
大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 解説図C

右端の点(図Dの赤い点)が$400$から$450$の間にある。
条件Dに合わないので、不適。

図D
大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 解説図D

条件A~Dの全部に合っているように見えるから、一旦保留だ。

左から7番目と8番目の点(図Eの赤い点)が、両方とも$100$より右にある。
なので、平均値も$100$より大きい。
条件Bに合わないので、不適。

図E
大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 解説図E

以上より、学習者数(横軸)の分布を確認するだけで、答えが見つかった。

正しい散布図は、選択肢の

である。

解答カ:2

(3)

復習

データ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$と$\{y_{1},y_{2},\cdots,y_{n}\}$があり、
それぞれの標準偏差を$s_{x}$,$s_{y}$ $\{x\}$と$\{y\}$の共分散を$s_{xy}$ とするとき、$\{x\}$と$\{y\}$の相関係数$r_{xy}$は、
$r_{xy}=\displaystyle \frac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$
である。

復習より、$S$と$T$の相関係数は、
$\displaystyle \frac{735.3}{39.3\times 29.9}=\frac{\cancel{7353}^{2451}\times 10}{\cancel{393}^{131}\times 299}$
$\hspace{96px} =\displaystyle \frac{24510}{39169}$
$\hspace{96px} =0.625\ldots$
となる。

これを小数第3位で四捨五入して、正解は
$0.63$
である。

解答キ:0, ク:6, ケ:3

(4)

次は、選択肢の散布図の中から

$S$の平均値が$81.8$条件E
$T$の平均値が$72.9$
$S$と$T$の相関係数が$0.63$条件F

であるものを探す問題だ。

まず、選択肢の⓪,①だけど、$S$,$T$ともに平均値が$100$前後に見える。
条件Eに合わないので、⓪,①は不適。

残る②,③のどちらかが正解なんだけど、ここで相関係数と散布図の復習をしておこう。

復習

以下の散布図は、横軸・縦軸ともに矢印方向が大きい値とする。

大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 復習図

左端の図のように すべての点が右上がりの直線上にあれば、相関係数は$+1$ 右端の図のように 右下がりの直線上にあれば、相関係数は$-1$ 点の分布が直線的な配置から乱れるにつれて、相関係数は$0$に近づく

ただし、点が直線的に分布していても、次の図のように縦軸や横軸に平行なときには、相関係数はに近い値になる。

大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 復習図

(誤解しないでほしいのだけど、分布の傾きが$0$に近づけば相関係数も$0$に近づくという意味ではない。ページをつくって詳しく解説したいけど、当分先の話になるかも。)

特に、下の図のように点が完全に軸に平行に分布しているとき、相関係数は計算できないため存在しない。

大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 復習図

で、選択肢の散布図の②と③を見比べて、条件Fの相関係数が$0.63$である方を選ぶ。
②は点がかなりばらばらに分布している。相関係数は$0.5$より小さそうだ。(計算してみたら、約$0.43$だった。)

よって、正解は

である。

解答コ:3

アドバイス

以上のような解説だと、納得できない人も多いと思う。
「⓪,①は不適」の部分は大丈夫だと思うけど、問題は「②の相関係数は$0.5$より小さくて」の部分だ。
散布図を見慣れていれば何となく想像がつくけど、「そんなの分からん」って人がほとんどじゃないだろうか。
なので、見慣れよう。

以下に、相関係数が$0.5$のときの散布図をいくつか載せておいた。
ながめてイメージをつかんでほしい。

大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図 大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図 大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図 大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図 大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図 大学入学共通テスト2022年本試 数学Ⅰ第4問 アドバイス図

(5)

問題文中の表3を完成させるんだけど、問われているのは3つの階級なので、その部分だけを考えよう。

問題文中の表2を見ると、7か国の教員1人あたりの学習者数は
30以上60未満が1か国 60以上90未満はなし 90以上120未満が1か国 ある。

問題文中の図5から、29か国の教員1人あたりの学習者数は
30以上60未満は、$11+2=13$か国 60以上90未満は、$1+2=3$か国 90以上120未満は、$1+0=1$か国 と読み取れる。

図5の階級幅は、表2,表3の半分なので注意。

以上より、7か国と29か国を合わせた36か国の国数は
30以上60未満が、$13+1=14$か国 60以上90未満が、$3+0=3$か国 90以上120未満が、$1+1=2$か国 であることが分かる。

解答サ:1, シ:4, ス:3, セ:2


ここで思い出しておくと

復習

平均$=$ 合計 国数 合計$=$平均$\times$国数

だった。

いま問われている36か国の平均値とは、
36か国の合計 $36$ 式A
のこと。

分子の36か国の合計は
なので、式Aは
29か国の合計$+$7か国の合計 $36$ 式B
とかける。

復習より
29か国の合計$=$29か国の平均$\times$29か国の国数 7か国の合計$=$7か国の平均$\times$7か国の国数 なので、
29か国の合計$=44.8\times 29$ 7か国の合計$=62.6\times 7$ といえる。

よって、式Bは
$44.8\times 29+62.6\times 7$ $36$ 式C
と表せる。

これと同じ式は、選択肢のうちの

である。

解答ソ:2


(Ⅰ),(Ⅱ)については、ひとつずつ考えよう。

(Ⅰ)

式Cは
値が$44.8$である29か国と、$62.6$である7か国の平均 を求める式と同じだ。
なので、式Cの計算結果、つまり36か国の平均は、$44.8$と$62.6$の間にある。
言いかえると、36か国の平均は、29か国の平均と 7か国の平均の間にある。
よって、(Ⅰ)は誤り。

(Ⅱ)

思い出しておくと、

復習

標準偏差は、分散の正の平方根

なので、
分散$=($標準偏差$)^{2}$
だ。

いま、問題文中の表4から
29か国の標準偏差$ \lt $7か国の標準偏差
なので、
$($29か国の標準偏差$)^{2} \lt ($7か国の標準偏差$)^{2}$
より
29か国の分散$ \lt $7か国の分散
であることが分かる。

よって、(Ⅱ)は正しい。

以上より、解答群のうち正しいのは

である。

解答タ:2