大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学ⅡB 第3問 解説

(1)

最初に、二項分布の復習をしよう。

復習

確率$p$で事象$\mathrm{A}$が起こる試行を$n$回繰り返し、$\mathrm{A}$が起こった回数を$X$とすると、$X$の確率分布は二項分布$B(n,p)$である。
確率変数$X$の
平均(期待値)は、$np$ 分散は、$np(1-p)$ 標準偏差は、$\sqrt{np(1-p)}$ になる。

この問題の
ジャガイモが大量にあって、そのうち$25$%が200gを超える。ここから$400$個抽出するとき、200gを超えるジャガイモが何個取り出されるか は、
$400$回の試行のうち、確率$0.25$で起こる事象が何回起こるか と同じことだ。

よって、復習から、抽出された200gを超えるジャガイモの数$Z$は、
二項分布$B(400,0.25)$ に従う。

解答ア:2, イ:5

また、その平均(期待値)は、復習より
$400\cdot 0.25=100$
である。

解答ウ:1, エ:0, オ:0

(2)

さらに、確率変数の変換の復習をしておく。

復習

確率変数$A$があり、その
平均(期待値)を$E(A)$ 分散を$V(A)$ 標準偏差を$\sigma(A)$ とする。

定数$p$,$q$を使って、新たな確率変数
$B=pA+q$
をつくる。

このとき、確率変数$B$の
平均は$pE(A)+q$ 分散は$p^{2}V(A)$ 標準偏差は$|p|\sigma(A)$ となる。

復習より、$R$の標準偏差$\sigma(R)$は、
$\sigma(R)=\left|\dfrac{1}{400}\right|$($Z$の標準偏差)式A
とかける。

いま、(1)の復習より、$Z$の標準偏差は
$\sqrt{400\cdot 0.25\cdot(1-0.25)}=\sqrt{75}$
なので、式Aは
$\sigma(R)=\left|\dfrac{1}{400}\right|\sqrt{75}$
と表せる。

これを計算して、
$$ \begin{align} \sigma(R)&=\dfrac{\sqrt{75}}{400}\\ &=\dfrac{5\sqrt{3}}{400}\\ &=\dfrac{\sqrt{3}}{80} \end{align} $$ である。

解答カ:2

同様に、$R$の平均(期待値)$E(R)$は、
$ E(R)=\dfrac{1}{400}\cdot$($Z$の平均)
ウエオを代入して、
$$ \begin{align} E(R)&=\dfrac{1}{400}\cdot 100\\ &=0.25 \end{align} $$ となる。


ここで、二項分布と正規分布の関係の復習をすると、

復習

$n$が十分に大きいとき、二項分布$B(n,p)$は、正規分布$N(np,np(1-p))$で近似できる。
このとき、
$np$は確率変数の平均 $np(1-p)$は分散

だった。

$400$は十分に大きいので、復習より、$R$は正規分布で近似できる。

上で求めたように、
$R$の平均は$0.25$ $R$の標準偏差は$\dfrac{\sqrt{3}}{80}$なので、分散は$\left(\dfrac{\sqrt{3}}{80}\right)^{2}$ だから、近似的に$R$が従う正規分布は
$N\left(0.25,\left(\dfrac{\sqrt{3}}{80}\right)^{2}\right)$ である。

このことから、$R$の確率分布図は図Aのようになる。

図A
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第3問 解説図A

ここで、
$P(R\geqq x)=0.0465$
となるとき、図Aでいうと、オレンジの部分の面積が$0.0465$になるときを考える。
このときの$x$、つまり赤い線の$R$の値がだ。

正規分布の面積なので、正規分布表を使おう。

図B
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第3問 解説図B

正規分布表に載っているのは、標準正規分布(図B)の面積。
図Bのオレンジの部分の面積が$0.0465$になるのは、緑の部分の面積が
$0.5-0.0465=0.4535$
になるとき。

$0.4535$を正規分布表で探すと、
$z_{0}=1.68$式B
であることが分かる。

これがだ、と言いたいところだけど、図Aと図Bでは目盛が違うので 式Bの値をそのまま使うわけにはいかない。
なので、目盛をそろえよう。
つまり、図Bの標準正規分布$N(0,1)$を、図Aの$N\left(0.25,\left(\dfrac{\sqrt{3}}{80}\right)^{2}\right)$に変換しよう。

$N(0,1)$は
平均が$0$ 標準偏差が$1$
$N\left(0.25,\left(\dfrac{\sqrt{3}}{80}\right)^{2}\right)$は
平均が$0.25$ 標準偏差が$\dfrac{\sqrt{3}}{80}$

なので、
平均を$0$から$0.25$に 標準偏差を$1$から$\dfrac{\sqrt{3}}{80}$に 変えればよい。

(2)の最初にした確率変数の変換の復習から、
平均を$0.25$大きくするためには、確率変数に$0.25$をたす 標準偏差を$\dfrac{\sqrt{3}}{80}$倍にするには、確率変数に$\dfrac{\sqrt{3}}{80}$をかける 作業をすればよい。

よって、
$\fbox{キ}=\dfrac{\sqrt{3}}{80}Z_{0}+0.25$
とかけるから、これに式Bと$\sqrt{3}=1.73$を代入して、
$$ \begin{align} \fbox{キ}&=\dfrac{1.73}{80}\cdot 1.68+0.25\\ &\doteqdot 0.286 \end{align} $$ である。

解答キ:2

(3)

確率変数$X$は
$100\leqq X\leqq 300$
であり、$X$の確率密度関数を
$f(x)=ax+b$
とする。

$X$は$100\leqq X\leqq 300$以外の値にはならないので、
$P(100\leqq X\leqq 300)$
はすべての確率の和だ。

すべての確率の和は$1$だから、
$P(100\leqq X\leqq 300)=1$
である。

解答ク:1


以上を確率分布図で表すと、図Cができる。

図C
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第3問 解説図C

図Cは確率分布図なので、確率は $f(x)$と横軸の間の面積に等しい。
なので、で求めた
$P(100\leqq X\leqq 300)=1$
は、図Cの緑の部分の面積にあたる。

図Cの緑の部分の面積は
$\displaystyle \int_{100}^{300}f(x)\,dx=\int_{100}^{300}(ax+b)\,dx$
とかける。
この面積が$1$なので、
$\displaystyle \int_{100}^{300}(ax+b)\,dx=1$式C
だ。

式Cを計算して、$a$と$b$の関係式をつくる。
積分してもいいんだけど、せっかくだから違う方法をしよう。
台形の面積として求める。

台形の面積の公式
$\dfrac{1}{2}\times($上底$+$下底$)\times$高さ
より、緑の部分の面積は
緑$=\dfrac{1}{2}\cdot\{f(100)+f(300)\}\cdot(300-100)$
とかける。

緑の部分の面積は$1$なので、
$\dfrac{1}{2}\{f(100)+f(300)\}\cdot(300-100)=1$

これを計算して、

途中式 $\dfrac{1}{2}\{(100a+b)+(300a+b)\}\cdot 200=1$
$100(400a+2b)=1$
$10^{2}(4\cdot 10^{2}a+2b)=1$
$4\cdot 10^{4}a+2\cdot 10^{2}b=1$
である。

解答ケ:4, コ:2

別解

式Cを積分して求めると、次のようになる。

$\displaystyle \int_{100}^{300}(ax+b)\,dx=1$
を計算して、
$\left[\dfrac{a}{2}x^{2}+bx\right]_{100}^{300}=1$

途中式 $\begin{aligned}&\left(\dfrac{a}{2}\cdot 300^{2}+b\cdot 300\right)\\&\hspace{80px}-\left(\dfrac{a}{2}\cdot 100^{2}+b\cdot 100\right)=1\end{aligned}$
$100\left\{\begin{aligned}&\left(\dfrac{a}{2}\cdot 3\cdot 300+b\cdot 3\right)\\&\hspace{40px} -\left(\dfrac{a}{2}\cdot 100+b\right)\end{aligned}\right\}=1$
$100(400a+2b)=1$
$10^{2}(4\cdot 10^{2}a+2b)=1$
$4\cdot 10^{4}a+2\cdot 10^{2}b=1$
である。

解答ケ:4, コ:2


$a$と$b$の関係式がひとつできた。
もうひとつ式があると、連立方程式で$a$と$b$の値が求められる。
なので、もうひとつ式をつくろう。


$X$の平均$m$は
$$ \begin{align} m&=\int_{100}^{300}xf(x)\,dx\\ &=\int_{100}^{300}x(ax+b)\,dx \class{tex_formula}{式D} \end{align} $$ とかける。

これを計算して、$m$を標本平均の$180$とすると、問題文より
$\dfrac{26}{3}\cdot 10^{6}a+4\cdot 10^{4}b=180$
ができる。

問題を解くときには式Dから②への計算はしなくてもいいけど、念のために計算を次に載せておく。

式Dから②への計算

$\displaystyle m=\int_{100}^{300}x(ax+b)dx$
を計算すると、
$\displaystyle m=\int_{100}^{300}(ax^{2}+bx)dx$
より
$m=\left[\dfrac{a}{3}x^{3}+\dfrac{b}{2}x^{2}\right]_{100}^{300}$
とかける。

これはさらに、
$$ \begin{align} m&=\left(\dfrac{a}{3}\cdot 300^{3}+\dfrac{b}{2}\cdot 300^{2}\right)\\ &\hspace{100px} -\left(\dfrac{a}{3}\cdot 100^{3}+\dfrac{b}{2}\cdot 100^{2}\right)\\ &=100^{2}\left\{\begin{aligned}&\left(\dfrac{a}{3}\cdot 3^{2}\cdot 300+\dfrac{b}{2}\cdot 3^{2}\right)\\&\hspace{60px}-\left(\dfrac{a}{3}\cdot 100+\dfrac{b}{2}\right)\end{aligned}\right\}\\ &=10^{4}\left(\dfrac{26}{3}\cdot 10^{2}a+4b\right)\\ &=\dfrac{26}{3}\cdot 10^{6}a+4\cdot 10^{4}b \end{align} $$ と計算できる。

この$m$を標本平均の$180$とすると、
$\dfrac{26}{3}\cdot 10^{6}a+4\cdot 10^{4}b=180$
となり、問題文中の②式ができる。


$a$と$b$の関係式が2つできたので、連立方程式にして$a$,$b$を求めよう。
$a$,$b$が分かると、$f(x)$が求められる。


①と②の連立方程式
$\left\{\begin{array}{l} 4\cdot 10^{4}a+2\cdot 10^{2}b=1 \class{tex_formula}{①}\\ \dfrac{26}{3}\cdot 10^{6}a+4\cdot 10^{4}b=180 \class{tex_formula}{②} \end{array}\right.$
を解く。

②の両辺を$3$倍して、
$26\cdot 10^{6}a+12\cdot 10^{4}b=560$

①の両辺を$6\cdot 10^{2}$倍して、
$24\cdot 10^{6}a+12\cdot 10^{4}b=600$

この2つの式を辺々引くと、

$26\cdot 10^{6}a$ $+12\cdot 10^{4}b$ $=$ $540$
$-)$ $24\cdot 10^{6}a$ $+12\cdot 10^{4}b$ $=$ $600$
$2\cdot 10^{6}a$ $=$ $-60$

なので、

途中式 $$ \begin{align} a&=-\dfrac{60}{2\cdot 10^{6}}\\ &=-\dfrac{3}{10^{5}} \end{align} $$ より
$a =-3\cdot 10^{-5}$
となる。

これを①に代入して、
$4\cdot 10^{4}\cdot(-3\cdot 10^{-5})+2\cdot 10^{2}b=1$
より
$-12\cdot 10^{-1}+2\cdot 10^{2}b=1$

$10^{-1}$は面倒なので、両辺を$10$倍して、
$-12+2\cdot 10^{3}b=10$

途中式 $2\cdot 10^{3}b=22$
$$ \begin{align} b&=\dfrac{22}{2\cdot 10^{3}}\\ &=\dfrac{11}{10^{3}} \end{align} $$ より
$b =11\cdot 10^{-3}$
である。

よって、$f(x)$は、
$f(x)=-3\cdot 10^{-5}x+11\cdot 10^{-3}$
となる。

解答サ:3, シ:1, ス:1


最後に問われているのは、200g以上のジャガイモの割合だ。
200g以上の割合は、ジャガイモを1個取り出したときに200g以上である確率と等しい。
なので、この確率を求める。
使うのは、③の$f(x)$だ。

マイナスの指数表記だとイメージがわかないって人もいるだろうから、③を
$f(x)=-\dfrac{3}{10^{5}}x+\dfrac{11}{10^{3}}$
と変形しておく。
もちろん、③式のままで大丈夫な人は変形しなくてOK。


図Cのときと同様に考えると、ジャガイモが200g以上である確率は、図Dの斜線部分の面積にあたる。
これがだ。

図D
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第3問 解説図D

さっきと同じように台形の面積として求めると、
$\fbox{セ}=\dfrac{1}{2}\cdot\{f(200)+f(300)\}\cdot(300-200)$

途中式 $$ \begin{align} \phantom{\fbox{セ}}&=\dfrac{1}{2}\left\{\begin{aligned}&\left(-\dfrac{3}{10^{\cancelto{3}{5}}}\cdot 2\cancel{00}+\dfrac{11}{10^{3}}\right)\\& +\left(-\dfrac{3}{10^{\cancelto{3}{5}}}\cdot 3\cancel{00}+\dfrac{11}{10^{3}}\right)\end{aligned}\right\} 100\\ &=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{10^{\cancel{3}}}\left\{\begin{aligned}(-& 6+11)\\& +(-9+11)\end{aligned}\right\}\cancel{100}\\ &=\dfrac{1}{\cancel{2}}\cdot\dfrac{1}{10}\cdot \cancelto{3.5}{7}\\ \end{align} $$
$\phantom{\fbox{セ}} =0.35$
なので、
は$ 35\%$となる。

解答セ:2

別解

図Dの斜線部分の面積を積分して求めると、次のようになる。

$\displaystyle \fbox{セ}=\int_{200}^{300}f(x)\,dx$
より
$$ \begin{align} \fbox{セ}&=\int_{200}^{300}\left(-\dfrac{3}{10^{5}}x+\dfrac{11}{10^{3}}\right)\,dx\\ &=\dfrac{1}{10^{3}}\int_{200}^{300}\left(-\dfrac{3}{10^{2}}x+11\right)\,dx \end{align} $$ とかける。

これを計算して、
$\fbox{セ}=\dfrac{1}{10^{3}}\left[-\dfrac{3}{2\cdot 10^{2}}x^{2}+11x\right]_{200}^{300}$

途中式 $$ \begin{align} \phantom{\fbox{セ}}&=\dfrac{1}{10^{3}}\left\{\begin{aligned}&\left(-\dfrac{3}{2\cdot 10^{2}}\cdot 300^{2}+11\cdot 300\right)\\& -\left(-\dfrac{3}{2\cdot 10^{2}}\cdot 200^{2}+11\cdot 200\right)\end{aligned}\right\}\\ &=\dfrac{1}{10^{3}}\left(\begin{aligned}-&\dfrac{3}{2}\cdot 3\cdot 300+11\cdot 300\\& +\dfrac{3}{2}\cdot 2\cdot 200-11\cdot 200\end{aligned}\right)\\ &=\dfrac{1}{10^{3}}\left\{\begin{aligned}\dfrac{3}{2}\cdot(-3\cdot& 300+2\cdot 200)\\& +11(300-200)\end{aligned}\right\}\\ &=\dfrac{1}{10^{3}}(-750+1100)\\ &=\dfrac{1}{10^{3}}\cdot 350 \end{align} $$
$\phantom{\fbox{セ}}=0.35$
なので、
は$ 35\%$となる。

解答セ:2