大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学ⅡB 第1問 [1] 解説
(1)
$x^{2}+y^{2}-4x-10y+4\leqq 0$
を$x$,$y$について平方完成すると、
$(x^{2}-4x+4)+(y^{2}-10y+25)-25\leqq 0$
より
$(x-2)^{2}+(y-5)^{2}\leqq 5^{2}$
と変形できる。
よって、この不等式が表す領域$D$は、
中心が$(2,5)$
半径が$5$
の円の周および内部である。
解答ア:2, イ:5, ウ:5, エ:3
(2) (i)
(1)から、点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{Q}$,円$C$と領域$D$のグラフを描くと、図Aができる。
領域$D$は緑の範囲で、境界線、つまり円$C$を含む。
図Aのように、点$\mathrm{A}$は$x$軸上にあり、円$C$は$x$軸に接する。
よって、$x$軸、つまり
$y=0$
は点$\mathrm{A}$を通り 円$C$に接する。
解答オ:0
(2) (ii)
$y=k(x+8)$
を
$x^{2}+y^{2}-4x-10y+4=0$
に代入するということは、この2つの式を連立方程式として解くということ。
なので、その解は
2つの図形の共有点の座標
である。
円と直線が接するとき、共有点は1個。
なので、連立方程式の解も1個になる。
以上より、直線$\ell$が円$C$の接線のとき、問題文の2次方程式は重解をもつ。
解答カ:0
(2) (iii)
図Bのように、点$\mathrm{A}$を通る$C$の接線のうち、$y=0$じゃない方を$\ell_{0}$とする。
また、$C$と$y=0$および$\ell_{0}$との接点を、それぞれ点$\mathrm{R}$,点$\mathrm{S}$とする。
$x$軸と直線$\mathrm{AQ}$のなす角を$\theta$とするとき、直角三角形$\mathrm{AQR}$を使って
$\displaystyle \tan\theta=\frac{\mathrm{QR}}{\mathrm{AR}}$
とかける。
ここで、点$\mathrm{A}$,点$\mathrm{Q}$の座標から
$\mathrm{AR}=2-(-8)$
$\phantom{ \mathrm{AR} } =10$
$\mathrm{QR}=5$
である。
なので、
$\displaystyle \tan\theta=\frac{5}{10}$
$\phantom{ \tan\theta } \displaystyle =\frac{1}{2}$
となる。
解答キ:1, ク:2
キクの計算で分かるように、直線と$x$軸のなす角$\theta$のタンジェントは
$\tan\theta =$
$y$の増加量
$x$の増加量
と表せる。
これは直線の傾きに等しい。
同様に、次に問われている$\ell_{0}$の傾きは
$\tan\angle \mathrm{SAR}$
と等しい。
いま、図Bのオレンジの三角形と青い三角形は合同だ。
詳しく
図Bで、
$\mathrm{QR}=\mathrm{QS}$(ひとつの円の半径)
$\mathrm{AR}=\mathrm{AS}$(ひとつの点からひとつの円に引いた2本の接線の長さは等しい)
$\mathrm{AQ}$は共通
$\mathrm{AR}$⊥$\mathrm{QR}$,$\mathrm{AS}$⊥$\mathrm{QS}$(接線と接点を通る半径は垂直)
である。
これらを組合せて、△$\mathrm{AQR}$と△$\mathrm{AQS}$の
三辺が等しい
二辺と間の角が等しい
直角三角形で、斜辺と他の一辺が等しい
などの証明ができる。
よって、図Bの
●$=\theta$
だから、
$\angle \mathrm{SAR}=2\theta$
となる。
以上より、接線$\ell_{0}$の傾きは
$\tan 2\theta$
である。
解答ケ:1
(2) (iv)
で、$k_{0}$を求めるんだけど、問題文の指示にあるように(ii),(iii)のどちらの方法を使ってもいい。
ここでは両方解説して、さらに別解をひとつ紹介しておく。
(ii)の方法
(ii)の方程式
$(k^{2}+1)x^{2}+(16k^{2}-10k-4)x$
$+64k^{2}-80k+4=0$式A
が重解をもつときの$k$のうち、$k=0$じゃない方が$k_{0}$だ。
なので、式Aの判別式から
$(16k_{0}^{2}-10k_{0}-4)^{2}$
$-4(k_{0}^{2}+1)(64k_{0}^{2}-80k_{0}+4)=0$
とかける。
途中式
これを整理すると、
$\cancel{2^{2}} (8k_{0}^{2}-5k_{0}-2)^{2}$
$-\cancel{4}(k_{0}^{2}+1)(64k_{0}^{2}-80k_{0}+4)=0$
$(\cancel{64k_{0}^{4}-80k_{0}^{3}}-32k_{0}^{2}+25k_{0}^{2}+20k_{0}\cancel{+4})$
$-(\cancel{64k_{0}^{4}-80k_{0}^{3}}+4k_{0}^{2}$
$+64k_{0}^{2}-80k_{0}\cancel{+4})=0$
$-75k_{0}^{2}+100k_{0}=0$
$3k_{0}^{2}-4k_{0}=0$
$k_{0}(3k_{0}-4)=0$
となる。
よって、
$k_{0}=0$,$\displaystyle \frac{4}{3}$
だけど、$k_{0}\neq 0$なので、求める$k_{0}$は
$k_{0}=\displaystyle \frac{4}{3}$
である。
解答コ:4, サ:3
(iii)の方法
(iii)より
$ k_{0}=\tan 2\theta$
$\displaystyle \tan\theta=\frac{1}{2}$
であることが分かっている。
これを使って$k_{0}$を求める。
ここで、2倍角の公式の復習をすると、
公式
$\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta$
$\cos 2\theta=\cos^{2}\theta-\sin^{2}\theta$
$\phantom{ \cos 2\theta } =1-2\sin^{2}\theta$
$\phantom{ \cos 2\theta } =2\cos^{2}\theta-1$
$\displaystyle \tan 2\theta=\frac{2\tan\theta}{1-\tan^{2}\theta}$式B
だった。
公式の式Bより、
$ k_{0}=\tan 2\theta$
$\phantom{ k_{0}\displaystyle } \displaystyle =\frac{2\tan\theta}{1-\tan^{2}\theta}$
とかける。
これに$\displaystyle \tan\theta=\frac{1}{2}$を代入して、
$k_{0}=\displaystyle \frac{2\cdot\frac{1}{2}}{1-\left(\frac{1}{2}\right)^{2}}$
$\phantom{ k_{0}\displaystyle } \displaystyle =\frac{1}{\frac{3}{4}}$
$\phantom{ k_{0}\displaystyle } \displaystyle =\frac{4}{3}$
である。
解答コ:4, サ:3
別解
$k_{0}$を求める方法は他に何通りも考えられるけど、ここでは点と直線の距離の公式を使う方法だけを紹介しておく。
先に点と直線の距離の公式を復習しておこう。
公式
直線$ax+by+c=0$
と
点$(\alpha,\beta)$
の距離$d$は、
$d=\displaystyle \frac{|a\alpha+b\beta+c|}{\sqrt{a^{2}+b^{2}}}$
だった。
この問題では、図Cのように、
点$\mathrm{Q}$と直線$\ell_{0}$の距離が、円$C$の半径
になればよい。
直線$\ell_{0}$の式は、
$y=k_{0}(x+8)$
なので
$k_{0}x-y+8k_{0}=0$
と変形できる。
よって、点と直線の距離の公式から、
$\displaystyle \frac{|2k_{0}-5+8k_{0}|}{\sqrt{k_{0}^{2}+(-1)^{2}}}=5$
と表せる。
途中式
これを整理して、
$\displaystyle \frac{|10k_{0}-5|}{\sqrt{k_{0}^{2}+1}}=5$
両辺を$5$で割って、
$\displaystyle \frac{|2k_{0}-1|}{\sqrt{k_{0}^{2}+1}}=1$
左辺の分母を払って、
$|2k_{0}-1|=\sqrt{k_{0}^{2}+1}$
両辺を2乗して、
$(2k_{0}-1)^{2}=k_{0}^{2}+1$
$4k_{0}^{2}-4k_{0}+1=k_{0}^{2}+1$
$3k_{0}^{2}-4k_{0}=0$
$k_{0}(3k_{0}-4)=0$
である。
よって、
$k_{0}=0$,$\displaystyle \frac{4}{3}$
となるけど、$k_{0}\neq 0$なので、求める$k_{0}$は
$k_{0}=\displaystyle \frac{4}{3}$
である。
解答コ:4, サ:3
最後は、$k$の範囲だ。
これまでの作業から、図Dのような関係が分かっている。
直線$\ell$と領域$D$が共有点をもつのは、$\ell$の傾きが図Dのオレンジの矢印の範囲のとき。
また、領域$D$は境界線(円$C$)を含む。
なので、$\ell$が図D中の赤い直線・青い直線と重なる場合もOK。
以上より、求める$\ell$の傾き$k$は
$0\leqq k\leqq k_{0}$
の範囲にあればよいことが分かる。
解答シ:5